地球は冬で寒くて暗い。

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たぶん成仏してほしいヘイトとか単なる思考の整理とか

【ネタバレ注意】映画「マリッジ・ストーリー」の感想

以前から観たいと思っていたものの、Netflix限定なため、なかなか観れずにいたのですが、転職先で英語を使うことになり、1ヶ月お試し会員から入会してみたので、さっそく観てみました。いつも通り、忘れない内にざっと考察を述べておきます。

まあまずは簡単にあらすじを。

結婚生活がうまく行かずにすれ違う、女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と、その夫で監督兼脚本家のチャーリー(アダム・ ドライバー)。二人は円満な協議離婚を望んでいたが、これまで閉じ込めてきた互いに対する積年の憤りが露わになって衝突、離婚弁護士を雇って争うことになるのだが……。

マリッジ・ストーリー

マリッジ・ストーリー

 

あらすじ通り、最初は円満な協議離婚をしようと、お互いの長所を言い合う場を設けたりする訳ですが、妻のニコールが拒否します。当初のお互いの長所を言い合う流れからすると大変円満な夫婦に見えるため、なぜニコールが拒否するのかは謎に終わるのですが物語が進むと同時に、その謎は解けてきます。

自己愛が強く、人を支配下に置いておかないと気が済まないチャーリー

チャーリーはニコールの挙げた長所にあるように、良い父親・夫としての側面を持っており、一見すると普通の、いやむしろ良い父親であるように見えます。が、それは前述の通りあくまで側面であり、実際は、妻や子供を自分の支配下に置きたがる上、自己愛が大変強く、自分の我慢や痛みには大変敏感にも関わらず、他者の立場に立って物を考えられない・他者の我慢や痛みに非常に鈍感です。例えば、ニコールが自身のキャリアアップを図るために監督をやりたいと何度か申し出ても握り潰したり、離婚調停中に決まった息子と共に居られる日は息子よりも規程を重視し、嫌がる息子を無理矢理自身のLAの別宅に連れ帰ったりしてきます。また、ラスト近くに離婚調停となったことでお互いの負けず嫌いが発揮され、なかなか決着が付かないことに痺れを切らし、二人で話し合おうとニコールが提案しても、自分がこれまで我慢してきたことを怒鳴り散らし、壁には穴を開けた上、最終的には「何が間違っていたんだ」と泣き崩れてしまう始末です。これは映画が始まって割と最初の辺りで明かされますが、暴力の酷い機能不全家庭で自立して育ったアダルトチルドレンであり、そのため、自身で自身を愛していくことで自分自身を満たすことしか出来なかったのではないかと考えられます。

大人に見えて他者に責任転嫁しがちなニコール

ニコールはチャーリーと比較すると比較的大人な風に見えますが、ニコール自身も、キャリアを潰されてきたことや、LAの実家に行く約束を反故にされたことを、チャーリーや他者に責任転嫁して何とか自尊心を保とうとする傾向が見られます。また、チャーリー同様負けず嫌いなところがある上、流されやすいところがあるため、弁護士の言いなりになってチャーリーを陥れたりと、少し子供な面が見られます。

なぜ二人は離婚しなければならなかったのか・離婚は何を意味しているのか

冒頭にあるように、二人はお互いの長所と短所を良く理解しており、円満に暮らしていけるようにも見えます。ただしネックになるのは、チャーリーの膨大な自己愛と支配欲です。これが結婚相手・子供に発揮され続ける限り、ニコールは自身のキャリアを描いていけることはないでしょう。そのため、ニコールはチャーリーを愛していながらも、自身のキャリアを描いていける人生(チャーリーの支配下から脱出する)を選んだのだと思われます。

なぜニコールはチャーリーに最後まで長所を伝えなかったのか

離婚調停をせず、円満離婚を図るため、当初はお互いの長所を言い合おうとする場面がありましたが、ニコールはそれを拒否し、結局図れませんでした。これはチャーリーの自己愛の強さをわかっているからこそ、「自身が理解しているチャーリーの長所<チャーリーの理解しているニコールの長所」という図式が成り立ち、自身が追い詰められると考えてのことだと思われます。ここで言ってしまえば、自身が不利な立場に置かれてしまうと察し、また周囲に流されたこともあり、離婚調停に踏み切ることになったのだと思われます。

また、それがラストに明かされることで、泣きながらそれを読むチャーリーと、それをドアの傍で泣きながら見守るニコールという、感動的なシーンに繋がっているのだと考えられます。

余談:アカデミー賞受賞/ノミネート一覧

アカデミー賞受賞:助演女優賞 ローラ・ダーン

アカデミー賞ノミネート:作品賞
            主演男優賞 アダム・ドライバー
            主演女優賞 スカーレット・ヨハンソン
            脚本賞
            作曲賞